沈黙は追認 芸能界の性加害問題 ジャニー喜多川

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55歳の男性が会社をクビになり、それを報告したTweetがバズっていた。

松尾潔と言う男性である。クビと言ったが、正確には業務委託契約が期間途中で解約となったものだ。

もっと正確に言うと、松尾潔は音楽プロデューサーであり、松尾潔の事務所と山下達郎の所属事務所であるスマイルカンパニーとの業務提携が解除となったものである。

業務提携契約は松尾潔側がスマイルカンパニーにプロデュース料を支払うという形のものだった。

Tweetにはジャニーズ事務所や山下達郎といったワードが並ぶ。

今回この方を取り上げるのは、松尾潔の書く文章に引き寄せられたのがきっかけだった。

  1. 音楽プロデューサー 松尾潔
    1. 目を引いた松尾潔の記事
  2. ジャニーズ事務所とスマイルカンパニーと山下達郎と松尾潔
    1. 1963年 ジャニーズ事務所創業
    2. 1964年 性加害裁判で認定されず
    3. 1975年 山下達郎デビュー
    4. 1978年 スマイルカンパニー設立
    5. 1988年頃~ 性加害告発
    6. 1999年 週刊文春による性加害問題記事
    7. 2003年 性加害認定
    8. 2009年 スマイルカンパニーと松尾潔が業務提携
    9. 2019年7月9日 ジャニー喜多川死去
  3. BBC報道とその後
    1. 2023年3月 BBCがドキュメンタリー配信
    2. 2023年3月10日 松尾潔が錦織一清の態度を問題視
    3. 2023年3月13日 松尾潔がラジオで性加害問題に初めて言及
    4. 2023年3月17日 松尾潔がコラムでジャニー喜多川を取り上げる
    5. 2023年5月14日 藤島ジュリー景子が公式見解
    6. 2023年5月14日 松尾潔が記者会見の実施を訴える
    7. 2023年5月15日 松尾潔がラジオで性加害を扱う(2回目)
    8. 2023年5月16日 ラジオの書き起こしが配信
    9. 2023年5月18日 スマイルカンパニーが松尾潔に解約を通告
    10. 2023年5月19日 松尾潔がゲンダイのコラムで性加害問題を扱う
    11. 2023年5月22日 松尾潔がラジオで性加害問題を扱う(3回目)
    12. 2023年6月2日 スマイルカンパニーが山下達郎夫妻の意向を伝える
    13. 2023年6月19日 松尾潔がラジオで性加害問題を扱う(4回目)
    14. 2023年6月30日 スマイルカンパニーと松尾潔の契約が終了する
    15. 2023年7月1日 松尾潔のTweetがバズる
  4. 山下達郎をよく聴いていた
    1. クリスマスイブの人だった
    2. ベスト盤でハマる
  5. 山下達郎ラジオ発言前夜
    1. 2023年7月5日 スマイルカンパニーより大切なお知らせ
    2. 7月6日 松尾潔がコラムに記事を掲載
  6. ラジオでブチ切れる
    1. 7月9日 サンデーソングブックオンエア
    2. 長い間会っていない
    3. 契約終了の理由はいろいろある
    4. 性加害問題なんて全く知らない
    5. ジャニー喜多川アゲ
    6. KinKi Kidsとの出会い
    7. ウェットな達郎
    8. 何故かSMAPの名前が出る
    9. 性加害問題なんて関係ねえ
    10. 嫌なら聴くな
  7. ミヤネ屋が騒動を取り上げる
    1. 7月9日 松尾潔がラジオに反応
    2. 7月10日 ミヤネ屋に文書を寄せる
  8. 黙っているのは追認
  9. 場外乱闘が発生する
    1. ヤマザキマリによるいいねと取り消し
    2. 7月10日 ASKAがゲンダイから認知症を心配される
    3. 山下達郎の怒りっぽさが掘り起こされる
  10. 国連がジャニーズ問題を調査
    1. 被害者と面談
    2. 78歳の被害者による新証言
    3. 2023年7月17日 松尾潔がラジオで性加害問題を扱う(5回目)
  11. 私達はどうあるべきか

音楽プロデューサー 松尾潔

松尾潔は音楽プロデューサーだ。ブラックミュージックのライターからキャリアをスタートし、久保田利伸や平井堅、CHEMISTRYといった多くのミュージシャンのプロデュースを手掛ける。

またソングライターとして楽曲制作も行い、執筆活動も行う。作詞作曲プロデュースを手掛けたEXILEのシングルが第50回日本レコード大賞を受賞している。

松尾潔

松尾 潔(まつお きよし、1968年1月4日 – )は、日本音楽プロデューサー作詞家作曲家音楽ライター小説家

Never Too Much Productions代表。通称はKC。本名「松尾潔」名義での作詞・作曲活動の他に、「小山内舞」及び「立田野純」名義での作詞も多数ある。

Wikipedia 松尾潔

メディアにもしばしば出る。過去に放送されたASAYANでCHEMISTRYを発掘、プロデュースしている。

現在はNHK‐FMで「松尾潔のメロウな夜」という番組を持つ。

福岡県のRKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』で毎週月曜日にコメンテーターを務めている。

日刊ゲンダイで「メロウな木曜日」という連載コラムを書くなどマルチな活動を行っている。

マルチに精力的な活動を行っているだが、失礼を承知で言えばワタシはこの人松尾潔のことを全く知らなかった。

一回も名前を聞いたことも顔を見たこともなかった。音楽プロデューサーという仕事が何をする職業なのか、今でもよくわからない。

目を引いた松尾潔の記事

ワタシはある日いつものようにアホ面で鼻くそをほじりながらiPhoneをスワイプしていた。iPhoneの画面に映し出されるWEBの情報を読むともなく眺めていた。

そんなアホ面のワタシの眼に偶然写ったのが以下の記事だ。リンクを貼るので読んでほしい。

松尾潔とスマイルカンパニーとの契約が中途で解除となった経過が書かれている。この文章が無茶苦茶良い。読みやすく、全く門外漢のワタシにも内容が理解できる。

松尾潔がスマイルカンパニーに振られたという内容だ。若干の怒りや失望をにじませながらも冷静な筆運びでなんとなくお洒落さまで感じさせる。

こんなに言語能力が高くて賢そうな人が一方的に契約を解除されるとはどういう事態だろう。松尾潔という言語能力の高い人が一体何をやらかしたのだろう。という面で興味をそそられた。

ことの経緯を時系列でまとめてみる。

ジャニーズ事務所とスマイルカンパニーと山下達郎と松尾潔

1963年 ジャニーズ事務所創業

1963年にジャニーズ事務所が創業する。渡邉プロダクションの系列会社だった。

1964年 性加害裁判で認定されず

1964年 ジャニー喜多川による、芸能学校生徒へのわいせつ行為を巡って裁判となるが、東京地裁は証拠がないとして性加害を認定しなかった。

1975年 山下達郎デビュー

1975年 シュガー・ベイブのアルバムSONGSで山下達郎がデビュー。

1978年 スマイルカンパニー設立

1978年 山下達郎の著作権管理等を目的とした音楽出版社としてスマイルカンパニーが設立される。

1988年頃~ 性加害告発

1988年頃から ジャニー喜多川の性加害を元ジャニーズタレント等が告発する本が出版される。

元フォーリーブス・北公次著『光GENJIへ』シリーズ(データハウス、1988年[12])、元ジューク・ボックスの小谷純・やなせかおる著『さらば!!光GENJIへ』(データハウス、1989年)、元ジャニーズの中谷良著『ジャニーズの逆襲』(データハウス、1989年)、平本淳也著『ジャニーズのすべて―少年愛の館』(鹿砦社、1996年)、豊川誕著『ひとりぼっちの旅立ち - 元ジャニーズ・アイドル 豊川誕半生記』(鹿砦社、1997年3月)、元光GENJI候補の木山将吾(山崎正人)著『SMAPへ – そして、すべてのジャニーズタレントへ』(鹿砦社、2005年[12])など、事務所に所属したタレントらにより事務所の内情を取り上げたいわゆる「暴露本」が出版された。

ウィキペディア ジャニー喜多川の性的虐待疑惑

1999年 週刊文春による性加害問題記事

1999年 週刊文春がジャニー喜多川の性加害問題の特集記事を組む。これに対してジャニーズ事務所及びジャニー喜多川は名誉毀損であるとして民事訴訟を起こす。

2003年 性加害認定

2003年 二審判決で裁判所がジャニー喜多川の性加害行為を認定する。2004年にジャニー喜多川側は最高裁に上告するが棄却される。 

2009年 スマイルカンパニーと松尾潔が業務提携

2009年 山下達郎のマネージメント会社である「スマイルカンパニー」と松尾潔の個人事務所は業務提携を結ぶ。

このとき松尾潔は41歳で、既にプロデューサー、作詞家、作曲家として、日本レコード大賞や年間最多セールス等を経験済みでリタイア願望を持て余していた。松尾潔は活力を得る場としてスマイルカンパニーに合流したと言っている。

後に山下達郎が明らかにした所によると、この業務提携は松尾潔側が顧問料を支払い、スパイルカンパニーが彼をマネージメントする契約だったようだ。金額は明らかでないがここから1年契約を14回更新している。


スマイルカンパニーの当時の社長は小杉理宇造で、彼はジャニー喜多川との親交が深くジャニーズ事務所の関連会社の社長も務めている。

2019年7月9日 ジャニー喜多川死去

2019年7月9日 ジャニー喜多川が死去する。享年87歳。生前の活動を称賛する番組が多く放送されるも性加害を問題視する報道はほとんど出なかった。

BBC報道とその後

2023年3月 BBCがドキュメンタリー配信

2023年3月 英BBCがジャニー喜多川の未成年者に対する性加害問題を扱ったドキュメンタリー「Predator: The Secret Scandal of J-POP」(J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル)を配信する。

日本でもBBCワールドニュースチャンネルを扱う複数のプラットフォームで配信された。松尾潔はこれを視聴する。

現在「Predator: The Secret Scandal of J-POP」は日本語版がYou Tubeでも無料公開されている。こちらからぜひ視聴をおすすめする。

You Tube BBC News Japan BBCドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」【日本語字幕つき】

2023年3月10日 松尾潔が錦織一清の態度を問題視

2023年3月10日 松尾潔が日刊ゲンダイに連載するコラム「松尾潔のメロウな木曜日」に「少年隊・錦織一清が自叙伝「少年タイムカプセル」で語ったことと語らなかったこと」という記事を投稿する。

この記事の中で松尾潔は、“『少年タイムカプセル』では、性加害があったかどうか、その片鱗さえ描かれることはない”と語っている。

2023年3月13日 松尾潔がラジオで性加害問題に初めて言及

2023年3月13日 松尾潔がRKBラジオのコーナー「BrushUP」の中でジャニー喜多川の性加害問題を扱う。

これにはポッドキャストはあるが公式サイトの書き起こし記事が無いためワタシが当ブログ内の別のページに書き起こしをした。

2023年3月17日 松尾潔がコラムでジャニー喜多川を取り上げる

2023年3月17日 松尾潔が日刊ゲンダイに連載するコラム「松尾潔のメロウな木曜日」に「『安倍晋三とジャニー喜多川』政治と芸能を取り巻く状況は相似形をなしている」という記事を投稿する。

ここまでの松尾潔の動きにはスマイルカンパニーは沈黙を続ける。

2023年5月14日 藤島ジュリー景子が公式見解

2023年5月14日 ジャニーズ事務所の社長、藤島ジュリー景子が動画と文章で公式見解を発表する。ジャニーズ事務所の代表が顔出しで情報を発信するのは極めて異例。

株式会社ジャニーズ事務所

2023年5月14日 松尾潔が記者会見の実施を訴える

2023年5月14日 藤島ジュリー景子の動画を受ける形で、松尾潔がTwitterで記者会見を訴える。

2023年5月15日 松尾潔がラジオで性加害を扱う(2回目)

2023年5月15日 松尾潔がRKBラジオのコーナー「BrushUP」の中でジャニー喜多川の性加害問題を再び扱う。これは書き起こしとポッドキャストがある。

私は、今回の疑惑を放置することは、ジャニーズ事務所だけの問題じゃないと思っています。一番の弊害は、今回の報道やマスコミの有り様を見た子供たちが、もし性犯罪・性暴力の被害者になったとき、「声を上げても無駄だ」という諦めの気持ちになるかもしれないことです。疑惑を放置することで、社会全体が諦めの気持ちを子供たちに植え付けかねないのではと怖れを感じています。

メディア、広告業界、芸能界だけでなく、みんながこの問題を直視しない限り、性加害や性暴力は、この先もなくならないでしょう。音楽業界に身を置く私も正直つらいです。ましてや、こういう世界に憧れたことがある、あるいは憧れている家族がいる、といった人たちも胸を痛めているはずです。

私たち一人一人が、この国が抱える問題として当事者意識を持ち、みんなで膿を出すというところに、舵を切るべきじゃないでしょうか。

RKBオンライン

松尾潔本人も言っていたことだが、音楽業界の関係者がジャニー喜多川の性加害問題に正面から触れるというのは聞いたことがなかった。それだけジャニーズ事務所の芸能界への影響力が強大だと言うことなのだろう。

2023年5月16日 ラジオの書き起こしが配信

2023年5月16日 前日5月15日の書き起こし記事がYahoo!ニュースで配信される。

2023年5月18日 スマイルカンパニーが松尾潔に解約を通告

2023年5月18日 上記の書き起こし記事を読んだスマイルカンパニーの現社長である小杉周水が松尾潔を本社オフィスに呼び出し、マネージメント契約の中途解約を通告する。

松尾潔はこれを「ジャニーズ事務所やジュリー社長の名前をメディアで口にした、両者への不敬罪による一発退場」と表現している。

たしかにテレビのトーク番組でも芸能人がジャニーズ事務所の批判をするのを聞いたことが無い。たとえジャニー喜多川の話が出ても「ユーやっちゃいなよ」のように“やさしくてユーモラスなおじいさん”のように扱う話しか耳にしない。

芸能人や業界関係者はジャニーズ事務所や社長の名前をおいそれと口に出来ないようだ。


この席で社長の小杉周水は今後の事として、山下達郎夫妻に意向を確認し、それを踏まえて来週以降もう一度会おうと松尾潔に伝える。

2023年5月19日 松尾潔がゲンダイのコラムで性加害問題を扱う

2023年5月19日 松尾潔が日刊ゲンダイに連載するコラム「松尾潔のメロウな木曜日」に「寡黙を日本の伝統として褒めそやすのは、もう止めにしませんか。」という記事を投稿する。

記事の中で性加害問題を見て見ぬふりをするのはやめようと呼びかける。

2023年5月22日 松尾潔がラジオで性加害問題を扱う(3回目)

2023年5月22日 松尾潔はRKBラジオのコーナー「BrushUP」の中で三たびジャニー喜多川の性加害問題を扱う。

この放送の時点では、松尾潔はスマイルカンパニーから解約を通告され、山下夫妻の意向確認を待っているタイミングだが、ここでも踏み込んだ発言をしている。

東山さんは、近藤真彦さんが退所した後の、ジャニーズ事務所の“長男”として「最年長である私が最初に口を開くべきだ」と語っています。これは15日の日テレ『news zero』で、この問題に関するコメントを回避した櫻井翔さんを気遣っての発言と取れますし、実際そうなんでしょう。

でも、「後輩たちには極力待ってもらいました」って、これはおかしいと思いませんか? 名指しこそしていませんが「櫻井さんが15日に話さなかったのは、僕が待ったをかけていたんだ」という意味での発言だとしたら、それはテレビ朝日のキャスターが日テレのキャスターに待ったをかけたということであり、報道の自由の侵害にあたるのではないでしょうか。

RKBオンライン

2023年6月2日 スマイルカンパニーが山下達郎夫妻の意向を伝える

2023年6月2日 スマイルカンパニーのオフィスで同社社長の小杉周水が山下達郎夫婦が松尾潔との契約の中途終了に賛成であると伝える。

2023年6月19日 松尾潔がラジオで性加害問題を扱う(4回目)

2023年6月19日 松尾潔はRKBラジオのコーナー「BrushUP」の中で四たびジャニー喜多川の性加害問題を扱う。この時点で松尾潔は契約を解除されている状態だが、その事は公表していない。

怒りなどは滲ませず冷静にジャニーズ事務所やジュリー藤島社長に呼びかけている。

きょうの結論としては「やっぱり、改めて膿を出しましょうよ」ということです。1か月前と同じことをまた言いますが、そうしないと、才能のある若い人たちが、僕の愛するこのエンターテインメントビジネスに、もう寄ってこなくなるのではないでしょうか。大変、危惧しています。

RKBオンライン

2023年6月30日 スマイルカンパニーと松尾潔の契約が終了する

2023年6月30日 スマイルカンパニーと松尾潔との契約が6月末で終了となる。

2023年7月1日 松尾潔のTweetがバズる

2023年7月1日 スマイルカンパニーとの契約が終了した旨を松尾潔がツイートしバズる。

山下達郎をよく聴いていた

クリスマスイブの人だった

ここでワタシの山下達郎に対するスタンスを表明する。山下達郎の曲が結構好きだ。1975年生まれのワタシにとって山下達郎は「クリスマス・イブ」の人だった。

山下達郎のクリスマスソングである「クリスマス・イブ」は1988年のJR東海のCMで使用されてセールスを伸ばした。

ポンキッキーズのテーマに使われていた山下達郎の楽曲「パレード」を気に入った。ワタシは20歳頃に「パレード」や「クリスマス・イブ」の収録された山下達郎のベスト盤を購入した。1995年発売の「TREASURES」である。

ベスト盤でハマる

素晴らしいアルバムだった。スプリンクラー、高気圧ガール、さよなら夏の日、踊ろよ、フィッシュ、ゲット・バック・イン・ラブなど良曲で溢れていた。このアルバムは何度聴いたかわからない。

このアルバムを聴いたことでワタシの中での山下達郎が「クリスマス・イブ」の人から「イケてるミュージシャン」という認識に切り替わった。その後は何枚かのアルバムを購入して聴いていた。

山下達郎はテレビには全く出ないが、ラジオ番組を持っている。毎週日曜日に放送されている「山下達郎サンデーソングブック」という番組だ。これも時々聴いていた。山下達郎は曲は良いのだが、喋りは面白くは無い。全く面白くない。喋りからはさっぱりとした人なんだろうという印象を受けた。洋楽に詳しいストイックなオタクのおじさんといった印象だ。山下達郎に悪い印象は全く持っていなかった。

山下達郎ラジオ発言前夜

2023年7月5日 スマイルカンパニーより大切なお知らせ

2023年7月5日水曜日 スマイルカンパニーが自社HPに「スマイルカンパニーより大切なお知らせ」という文章を掲載する。

スマイルカンパニー公式サイト

スマイルカンパニーの社長である小杉周水の名前で文章が出された。クビにしたんじゃないよ、合意で契約終了だよと言う内容だ。7月1日に松尾潔が投稿したTweetが大バズリした事への対応と思われる。

皆さまへ

平素より大変お世話になっております。
この度、スマイルカンパニーと業務提携をしておりました松尾潔氏と松尾潔事務所との業務委託契約が本年6月30日をもって双方の合意により終了しましたことをお知らせ致します。

契約終了直後に、松尾氏がTwitterで弊社所属の山下達郎の名前にも触れてツイートを行ったことが各方面で取り上げられておりますが、今回の契約解除は、松尾氏によるこれまでの社内外での言動等に鑑み、弊社代表である私自身の判断により、松尾氏との協議の上、合意により終了することとなったものです。
双方の代理人弁護士による署名/捺印済みの解約合意書もございます。
その他については、守秘義務の関係もあり、お答えを差し控えさせていただきます。

尚、一部週刊誌やインターネット上で拡散されております件につきまして、今週日曜日(7/9)14時からTOKYO FMとJFN(全国38局ネット)で放送されます山下達郎サンデー・ソングブック内にて、山下達郎本人より大切なご報告がございます。この度は、ご心配とご迷惑をおかけして申し訳ございません。

今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

2023年7月5日
株式会社スマイルカンパニー
代表取締役社長
小杉 周水

スマイルカンパニー

この文章の中で気になる部分があった。

尚、一部週刊誌やインターネット上で拡散されております件につきまして、今週日曜日(7/9)14時からTOKYO FMとJFN(全国38局ネット)で放送されます山下達郎サンデー・ソングブック内にて、山下達郎本人より大切なご報告がございます

スマイルカンパニー

山下達郎がラジオ番組内でこの件について触れるというのだ。ワタシはこの文章をリリースから2日後の7月7日に目にしたのだが、山下達郎本人より大切なご報告というのがとても心に引っ掛かった。

いろいろな事を考えた。

山下達郎が何を報告するのだろう。
先にバズった松尾潔のTweetの中で“私をスマイルに誘ってくださった山下達郎さんも会社方針に賛成とのこと、残念です。”と言った部分について何か言うのだろうか。
山下達郎は何を言う気だろう“ビジネスでは離れる事になるけど、松尾さんとは今後も友人です”とか言うのだろうか。山下達郎のイメージを落とさないためだろうか。
でもテレビやCMに全く出ない山下達郎にイメージ保護など必要だろうか。個人的な仲直りなら当事者同士でゴメンネ!とでも連絡すれば良いだけだろう。
“松尾氏によるこれまでの社内外での言動等に鑑み”とはなんだろう。実は松尾潔は悪人であり、ラジオの中で松尾潔の悪行三昧をバラすのだろうか。
悪行三昧をバラすなら山下達郎がラジオでやる必要はなく、プレスリリースに入れればいいだろう。
あの綺麗な文章を書く松尾潔が悪行三昧を働くとも思えないのだが。
“一部週刊誌やインターネット上で拡散されております件につきまして”というのも何を指すのだろう。
松尾潔がツイートしたジャニーズ事務所や藤島ジュリー景子の事だろうか。山下達郎がラジオで喋る必要があるのか。スマイルカンパニーが発表すれば良いんじゃないか。
山下達郎がラジオの中でこの件に言及する目的やメリットが分からない。悪い予感しかしない。

予告された山下達郎のラジオは7月9日の日曜日である。文章が出されてから4日後という事になる。ワタシはこのスマイルカンパニーの文章を7月7日に読んだのだが、それから日曜日までなんとなく落ち着かない日々を過ごすことになった。

7月6日 松尾潔がコラムに記事を掲載

7月6日 松尾潔が日刊ゲンダイに連載するコラム「松尾潔のメロウな木曜日」に“「スマイルカンパニー契約解除の全真相」弁護士を通じて山下達郎・竹内まりや夫妻の“賛成事実”を確認”という記事を投稿する。ワタシが読みやすくて感動した記事だ。

ラジオでブチ切れる

7月9日 サンデーソングブックオンエア

7月9日日曜日14時 “山下達郎サンデー・ソングブック”のオンエア日を迎える。ワタシは普段はラジオをラジコタイムフリーで聴くことが多いのだが、この日はリアルタイムで聴取することとした。

14時に放送が始まる。山下達郎はいつものように淡々とした調子で数曲を紹介する。楽天カードマンのCMを挟みながら数曲紹介した後に問題の本題に入った。

さてこの度私のオフィス、スマイルカンパニーと業務提携をしていた松尾潔氏が契約終了となり、そのことについて私の名を挙げたことでネットや週刊誌等で色々と書かれております。私はツイッター・フェイスブック・インスタといったモノを一切やっておりませんのでネットで発信することが出来ません。そのため私の唯一の発信基地であるこの『サンデー・ソングブック』にて私のお話を皆さんにお聞きをいただこうと思います。少々長くなりますがお付き合いください。

TBSNEWSDIG

と語りを始める。山下達郎をテレビで見かけることが無いが、山下達郎がSNSも一切やっていない事を初めて知った。ラジオ番組のサンデーソングブックを唯一の発信拠点として大事にしているんだろうと感じた。

長い間会っていない

ここから全文の書き起こしをワタシの感じたことを挟みながらTBSNEWSDIGから引用したい。

まずもって、私の事務所と松尾氏とはですね彼から顧問料を頂く形での業務提携でありましたので、雇用関係にあったわけではない。また彼が所属アーティストだったわけでもなく、したがって『解雇』には当たりません。弁護士同士の合意文書も存在しております。

TBSNEWSDIG

松尾潔が雇われ側だと思っていた。逆だった。業務提携と言うのがどういうものか分からないが音楽業界や芸能界はそういうものなんだろう。

松尾氏との契約終了についてはですね、事務所の社長の判断に委ねる形で行われました。松尾氏と私は直接、何も話をしておりませんし、私が社長に対して契約を終了するよう促したわけでもありません。そもそも彼とは、もう長い間会っておりません。年にメールが数通という関係です。

TBSNEWSDIG

松尾潔は山下達郎との関係を親しげに伝えていたと思ったが、長い間あっていないらしい。メールが数通というのはとても距離を感じる。あまり仲が良くないのか。

契約終了の理由はいろいろある

今回、松尾氏が、ジャニー喜多川氏の性加害問題に対して憶測に基づく一方的な批判をしたことが契約終了の一因であった、ということは認めますけれど、理由は決してそれだけではありません。他にもいろいろあるんですけれど。今日この場ではそのことについては、触れることを差し控えたいと思います。

TBSNEWSDIG

他にもいろいろあるって何よ、と思う。やっぱり松尾潔は悪行三昧なのかと思う。同時にこういう含みをもたせた言い方は嫌らしいなあと感じる。

ネットや週刊誌の最大の関心事はですね、私がジャニーズ事務所への忖度があって、今回の1件もそれに基づいて関与しているのでは、という根拠のない憶測です。今の世の中は、なまじ黙っていると『言ったもの勝ち』で、どんどんどんどんウソの情報が拡散しますので、こちらからも思うところを正直に率直にお話ししておく必要性を感じた次第であります。

TBSNEWSDIG

山下達郎が黙っていられないという人間性を滲ませてくる。山下達郎は普段メディアに露出せず黙ってるので意外に思う。ちょっと喧嘩腰になっている感じを受ける。

性加害問題なんて全く知らない

今、話題となっている性加害問題については、今回の一連の報道が始まるまでは、漠然とした噂でしかなくて、私自身は1999年の裁判のことすら聞かされておりませんでした。当時私のビジネスパートナー、ジャニーズの業務を兼務していましたけれど、マネージャーでもある彼が『1タレント』である私に、そのような内情を伝えることはありませんでした。

TBSNEWSDIG

ジャニー喜多川の性加害問題を「漠然とした噂」と山下達郎は言うが、ワタシは何年も前から週刊誌やネットの情報で知っていた。山下達郎はちょっと嘘付いてるんじゃないかと感じる。

性加害が本当にあったとすれば、それはもちろん許しがたいことであり、被害者の方々の苦しみを思えば、第三者委員会等での事実関係の調査というのは必須であると考えます。しかし、私自身がそれについて知っていることが何もない以上、コメントの出しようがありません。

TBSNEWSDIG

山下達郎は性加害問題を知らないことを強調してくる。

自分はあくまで『一作曲家・楽曲の提供者』であります。ジャニーズ事務所は他にも、ダンス・演劇・映画・テレビなど業務・人材も多岐にわたっておりまして、音楽業界の片隅にいる私にジャニーズ事務所の内部事情など、まったくあずかり知らぬことですし、まして『性加害』の事実について、私が知る術は全くありません。

TBSNEWSDIG

ワタシでもジャニー喜多川が裁判で敗訴して性加害が事実認定されてるのは知ってるけど、山下達郎に知る術が全く無いって言うのは言い過ぎでは無かろうかと思う。相手の素性は曲の提供には関係ないというスタンスを感じさせる。相手が誰であろうと提供すると言うことだろうか。

ジャニー喜多川アゲ

私は中学生だった1960年代に、初代ジャニーズの楽曲と出会って、ジャニー喜多川さんという存在を知りました。何年か後に、初代ジャニーズの海外レコーディング作品を聞いて、私はとても感動して、この『サンデー・ソングブック』でも特集したことがあります。

TBSNEWSDIG

初代ジャニーズで感動したという情報を出してきた。松尾潔“氏”と言っていた後でジャニー喜多川“さん”という所が少し引っ掛かった。ここからジャニー喜多川アゲが始まる事になる。

1970年代の末に、私の音楽を偶然に聞いたジャニーさんに褒めて頂いて、そのご縁で数年後に私のビジネスパートナーが近藤真彦さんのディレクターとなったことから『ハイティーン・ブギ』という作品が生まれました。その後も、ジャニーズに楽曲を提供する中で、多くのすぐれた才能と出会い、私自身も作品の幅を大きくひろげることが出来、成長させていただきました。

TBSNEWSDIG

ジャニー“さん”に加えて「成長させていただいた」などと、えらく言葉遣いが丁寧になる。

KinKi Kidsとの出会い

たくさんのジャニーズのライブに接することが出来たおかげで、『KinKi Kids』との出会いがあって、そこから『硝子の少年』という作品を書くことが出来て、昨年の『Amazing Love』まで彼らとの絆はずっと続いております。

TBSNEWSDIG

KinKi Kidsの硝子の少年は知っている。結構好きだ。山下達郎にとっては佳作の一つかと思っていたが、割と重要な作品だったらしい。

ウェットな達郎

芸能というのは、『人間が創るもの』である以上、人間同士のコミュニケーションが必須です。どんな業界・会社・組織でも、それは変わらないでしょう。人間同士の『密』な関係が構築できなければ、良い作品など、生まれません。

TBSNEWSDIG

山下達郎が人間関係とか密な関係とか言うのが意外だった。山下達郎は音楽を孤独にストイックに追求できれば幸せな人間だと勝手に思っていたので意外な印象を受ける。

そうした数々の才能あるタレントさんを輩出した、ジャニーさんの功績に対する、尊敬の念は、今も変わっていません。私の人生にとって、一番大切なことは『ご縁』と『ご恩』です。ジャニーさんの育てた、数多くのタレントさんたちが、戦後の日本で、どれだけの人の心を温め、幸せにし、夢を与えてきたか。私にとっては、素晴らしいタレントさんたちや、ミュージシャンたちとの『ご縁』を頂いて、時代を超えて、長く歌い継いでもらえる作品を作れたこと、そのような機会を与えて頂いたことに、心から恩義を感じています。

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山下達郎はカラッとした曲が多いイメージだけど「ご縁・ご恩」とかめちゃくちゃウエットなこと言う。ジャニー喜多川のことを尊敬していて恩義を感じていると表明してくる。

何故かSMAPの名前が出る

私が、一個人、一ミュージシャンとして、ジャニーさんへのご恩を忘れないことや、ジャニーさんのプロデュサーとしての才能を認めることと、社会的・倫理的な意味での性加害を容認することとは、全くの別問題だと考えております。作品に罪はありませんし、タレントさんたちも、同様です。繰り返しますが、私は性加害を擁護しているのではありません。アイドル達の芸事に対する
ひたむきな努力を間近で見てきた者として、彼らに敬意を持って接したいというだけなのです。

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ジャニーズ関連作品と性加害には関係が無いとの事。芸能人が逮捕されたりする度に作品に罪はないって最近よく聞く事ではある。

ですから、正直残念なのは、例えば素晴らしいグループだった『SMAP』の皆さんが解散することになったり、最近では、『キンプリ』が分裂してしまったり、『あんなに才能を感じるユニットがどうして?』と疑問に思います。私には何もわかりませんけれど、とっても残念です。願わくばみんなが仲良く連帯して、素晴らしい活動を続けて行ってほしいと思うのは私だけではないはずです。

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山下達郎がキンプリ分裂騒動を知っている事自体が意外だった。山下達郎が若いアイドルに才能を感じることも意外。自分の音楽しか認めないイメージだった。山下達郎がジャニーズアイドルの去就問題に心をもんで居るというのも意外な感じがした。

『KinKi Kids』、『嵐』、他のグループもみんな、末永く活動していってほしいと思うばかりです。先日、『男闘呼組』の再結成という嬉しいニュースがありましたが、同じようにいつか近い将来『SMAP』や『嵐』、『キンプリ』の再集合も実現するような日が来ることを『竹内まりや』共々に願っております。

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KinKi Kids・嵐・SMAP・男闘呼組、というグループ名が出てくる。ジャニーズの事に詳しいのは分かった。これって今回の話と関係あるのかと不思議に思う。

性加害問題なんて関係ねえ

性加害に対する様々な告発や、報道というのが飛び交う今でも、そうした彼らの音楽活動に対する私のこうした気持ちに変わりはありません。私の48年のミュージシャン生活の中でたくさんの方々から頂いた、『ご恩』に報いることが出来るように、私は、あくまで『ミュージシャン』という立場からタレントさんたちを応援していこうと思っております。彼らの才能を引き出し、良い楽曲を共に作ることこそが、私の本分だと思ってやってまいりました。

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ジャニー喜多川アゲな発言が続く。とにかくジャニー喜多川を尊敬している様子。「性加害問題?そんなの関係ねえ!」と山下達郎が水着一丁でやりそうな勢い。恩があるからジャニーズ事務所の悪口を言う奴は許せないということなんだろう。山下達郎はここから締めに入る。

嫌なら聴くな

この様な私の姿勢をですね『忖度』あるいは『長いものに巻かれている』と、その様に解釈されるのであれば、それでもかまいません。きっとそういう方々には、私の音楽は不要でしょう。以上が、今回のことに対する、私からのご報告です。長々失礼しました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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最後が強烈だった。「俺はジャニーズ事務所やジャニー喜多川に忖度してるんだよ。嫌なら聴くな。」と聞こえた。

狂牛病問題の時にアメリカ産牛肉を使用する吉野家の担当者が「嫌なら食べるな」と言った事を思い出した。

また岡村隆史の「嫌なら見るな」発言も思い出させる。

この「嫌なら見るな」発言は約6年半前、11年8月のラジオ番組までさかのぼる。岡村さんは番組で、俳優の高岡奏輔さんがツイッターでフジの韓流偏重姿勢を批判した問題に触れ、

「見いひんねやったら、見いひんかったらええのよ。ただそれだけのことやのに、何で皆に言う必要あるのかと思ってしまう」
とコメント。その上で、

「簡単なことなのよ、電気代しかかかってないねんから、テレビなんて。ペイパービューやったらまだしも、タダで見てんねんから電気代以外は。もうやめよう、ツイッターとか」
と持論を展開した。

JCASTニュース

こういう「嫌なら〇〇するな」発言は炎上しやすい。ワタシは山下達郎の「嫌なら聴くな」発言を聴いて「これは炎上するぞ」と感じた。好きだった爽やかな山下達郎と、その日のラジオでの凶暴な山下達郎とのギャップに戸惑った。

ミヤネ屋が騒動を取り上げる

この日「嫌なら聴くな」がトレンドワードとなったらしい。この放送の後から山下達郎の名がニュースで度々取り上げられる事になる。

7月9日 松尾潔がラジオに反応

7月9日 21:46 松尾潔がサンデーソングブック終了後に初めてのTweetをする。

山下達郎のラジオの放送直後に松尾潔が反応することを予想していたのだが、結局ツイートしたのは夜の9時を過ぎてからだった。スマイルカンパニーや山下達郎の名を出すことは無く、二言のTweetだがこれも1.6万いいねと注目されている。

7月10日 ミヤネ屋に文書を寄せる

2023年7月10日 日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」に山下達郎のラジオに対する反論の文書を寄せる。後にツイッターで全文を公開する。

■山下達郎さんが、 ラジオで話された内容についてどのように思われましたか。

オンエアの時、 私は自分が関わったミュージカル 『ムーラン・ルージュ』 で帝国劇場にいましたので、 radikoのタイムフリーで番組を聴いたのは夜になってからでした。

美声の達郎さんのよどみない語りは素晴らしい芸だなあと、あらためて痛感。かつて一緒に落語を聴きに行ったり、 落語CDをいただいたことを思い出しました

でも、冷静になって聴き直し、ネットの全文書き 起こしを読むと、 内容には事実を歪めかねない箇所がいくつかあり、また社会的弱者への共感と配慮を著しく欠いていたのも非常に残念でした。

以下、端的に実例をいくつか。

25年間ずっと 「松尾くん」と呼び続けてきた達郎さんが、番組内では「松尾氏」という表現をされていました。<この人と自分との間には結構な距離が ありますよ>というイメージ誘導の意図を感じずにはいられません。

「そもそも、彼とはもう長い間会っておりません。年にメールが数通という関係です」 という言葉にも、同様の意図を感じますね。実際には、昨年のアルバム『SOFTLY』のNHK-FM特番にも、達郎さんとスマイルカンパニーに請われて私は生出演しました。会った回数やメールの本数で <親密さ> を数値化するような考えかたは、アーティスト山下達郎が最も忌避してきたものではなかったでしょうか。何よりそれ以前の交遊さえ希薄だったように印象づける言い回しが恣意的すぎて残念です。

「理由は決してそれだけではありません。 他にもいろいろあるんですけれど。 今日この場ではそのことについては、触れることを差し控えたいと思います。」 とおっしゃいました。一方でご自身を「いちタレント」と位置づけた達郎さんが、ではなぜその<いろいろ> な<理由>をご存じなのか。 それは何なのか、私が教えていただきたいほど。 漠然とした何かを匂わせるような物言いは不適切であると考えます。

■山下達郎さんが「松尾様は所属アーティストでは なく解雇にあたらない」 と話していましたが事実でしょうか。

当然です。私も「解雇」という表現は一度も使っていません。

今回の件について予備知識がないままラジオを聴いた方が、あたかも私が「解雇」されたと主張しているかのような誤解を抱きかねないミスリードになる危険を感じました。

また、スマイルカンパニーと15年間にわたって業務提携を結んできた立場から申し上げると、 同じ事務所に所属している他のタレントの契約内容のデリケートな部分をご自身のラジオ番組で語る姿勢は不適切で、大いに問題があると考えます。

■山下達郎さんが「社長に対して契約を終了するように促したわけではありません」 と話していましたが、松尾様が代理人を通して聞いた話と齟齬はないでしょうか。

「促した」という表現には大いに齟齬を感じます。私は7/1のツイートでも、7/6の日刊ゲンダイ連載「松尾潔のメロウな木曜日」でも達郎さんが「促した」とは一度も書いておらず、「賛成」という表現を用いて、 彼が是認あるいは追認した事実を書いたのみです。ご自身の番組内で、私の表現をいったん変えてそれを否定する達郎さん。仮に意図的ではなかったにせよ、やはり疑問を抱かざるを得ません。残念です。

Twitter 松尾潔

黙っているのは追認

松尾潔は一人ひとりが当事者意識を持とうと呼びかける。RKBオンラインから引用する。

私は、今回の疑惑を放置することは、ジャニーズ事務所だけの問題じゃないと思っています。一番の弊害は、今回の報道やマスコミの有り様を見た子供たちが、もし性犯罪・性暴力の被害者になったとき、「声を上げても無駄だ」という諦めの気持ちになるかもしれないことです。疑惑を放置することで、社会全体が諦めの気持ちを子供たちに植え付けかねないのではと怖れを感じています。

メディア、広告業界、芸能界だけでなく、みんながこの問題を直視しない限り、性加害や性暴力は、この先もなくならないでしょう。音楽業界に身を置く私も正直つらいです。ましてや、こういう世界に憧れたことがある、あるいは憧れている家族がいる、といった人たちも胸を痛めているはずです。

私たち一人一人が、この国が抱える問題として当事者意識を持ち、みんなで膿を出すというところに、舵を切るべきじゃないでしょうか。

RKBオンライン

松尾潔は日刊ゲンダイの記事でキング牧師の言葉を引用している。

「最大の悲劇は悪人の暴力ではなく善人の沈黙であり、沈黙は暴力の陰に隠れた同罪者である」

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

問題に声を挙げなければたとえ自分が賛成していない、認めていないことでも追認したことになってしまうという内容の言葉だ。沈黙者は同罪者となるのだ。問題を問題だと表明するにははっきりとノーという発言をすることが必要だ。

松尾潔は「名声の自覚的な使い方」というテーマに度々言及している。例えば2023年5月1日に放送された松尾潔BrushUPの中で、ミュージシャンであり社会活動家のハリー・ベラフォンテを紹介する中で言及している。ハリー・ベラフォンテはマイケル・ジャクソンなど大物ミュージシャンが集まってリリースしたチャリティーソングである「We Are The World」の提唱者だ。

ハリー・べラフォンテさんの何が素晴らしいかというと、曲のヒットで得た名声の「使い方」に対して大変自覚的というところです。1963年の公民権運動「バーミングハム運動」で投獄されていた、キング牧師の釈放金を支払ったひとりが、このハリー・ベラフォンテだったと言われています。

松尾潔BrushUP

とはいえ仮にジャニーズ事務所の関係者、例えば事務所の営業担当の一人がこの問題に意見すれば恐らく職を失うことになるだろう。職を失いたくなければ、性加害問題には口を噤んで仕事をするしかない。黙っている事に罪悪感を全く感じない人ならそうするだろう。

黙っていれば仕事はクビにはならないだろうが、社会は全く変わらない。変わらないどころか少しずつ悪い方向に向かう可能性のほうが高い。

口を噤むことに罪悪感を覚える人は沈黙することに苦しむことになる。仕事を失う恐怖にも苦しめられるだろう。罪悪感を覚えながら仕事を続けるか、意見して仕事をクビになるかの選択をすることになるかも知れない。

今回松尾潔は意見して契約を解約となった。ジャニーズ事務所は音楽業界のみならず、芸能界全体で大きな影響力を持つ。松尾潔は今後音楽業界で仕事をやりにくくなる可能性がある。一連のスマイルカンパニーや山下達郎の動きは日本の芸能界の特徴を端的に表したものだと感じられる。

松尾潔はスマイルカンパニーと契約する前に引退願望を持っていたとのことなので、今後も食べていくのに困るということはないのかも知れない。しかし業界で干される可能性があるを考えると今回の一連の発言は非常に勇気あるものだと感じた。

一般的な一個人の話に落とし込むと、会社員の一人が正義のために会社の不正義に立ち向かうというのは非常に困難なことだ。今の会社をクビになったら再就職する当てが全くない人には無理な話かも知れない。正義以前に自分の暮らしを立てなければならないからだ。

スキルを身に着けていれば正義を貫いて会社を止めても、転職をしたり独立したりが可能になる。自分が罪悪感を感じないようにする、正義を貫くためにも自分が食べていくスキルが必要になると今回の件で感じた。

場外乱闘が発生する

ヤマザキマリによるいいねと取り消し

テルマエロマエを執筆した漫画家のヤマザキマリに関するツイートが話題となる。ヤマザキマリがTwitterで8ヶ月ぶりに怒涛のいいねをする。いいねをした対象は松尾潔をこき下ろす記事だ。

実はヤマザキマリはスマイルカンパニーの所属。山下達郎夫妻とも交友関係を持ち、山下達郎が2022年6月にリリースしたアルバム「SOFTLY」のジャケットの肖像画はヤマザキマリが描いたもの。

Twitterの仕様として誰が誰にいいねしたかが分かるようになっている。ワタシの想像だがヤマザキマリはこの仕様を理解していなかったのではないだろうか。有象無象の大衆の一人になって山下達郎に援護射撃をしていたつもりが、それがヤマザキマリ個人の行いだとバレバレな事に気付いたのかも知れない。

ヤマザキマリは数時間後にそのいいねを全て取り消す。その行動がTwitterユーザーでじ子@dejico__sanによってスクリーンショットされて晒されている。

Twitterは恐ろしい。いいね一つで個人の思想信条を示すと捉えられる場合がある。いいねボタンでも気軽に押してはならない。押す前によく考える必要がある。

これに松尾潔がTwitterで反応する。

不快感を示しながらも懐の深さを見せる。大人な反応だった。論語からの慣用句を引用し、最後は「素晴らしいことです!」で締めている。

7月10日 ASKAがゲンダイから認知症を心配される

CHAGE and ASKAのASKAがTwitterでこの件について触れる。

二日後の日刊ゲンダイでこれが取り上げられる。

Tweetの中でASKAは松尾潔の事は知らないと言っていたのだが、ゲンダイにはASKAと松尾潔が音楽フェスで盛り上がって方を組む写真が掲載された。

インスタグラムのストーリーズのスクリーンショット

「松尾さんはASKAさんと同じ日に出演していた松下洸平くんのプロデューサーとして来場していました。ほら、そのときインスタに載せたストーリーズのスクショです。ASKAさんが松尾さんのこと本気で忘れてるとしたらちょっと心配です。普通なら絶対に覚えてますけど……」

日刊ゲンダイ

ASKAが日刊ゲンダイに認知症を本気で心配されてしまった。「本気でこんな事言えないよ」「僕はこの瞳で嘘をつく」状態だったと思いたい。

山下達郎の怒りっぽさが掘り起こされる

1994年に山下達郎が妻のアルバムに書いたライナーノーツが引っ張り出される。

「竹内まりやが書いた駅という歌をアイドルに歌わせたら酷くてムカついた」という内容だ。

これは1986年に発売された中森明菜のアルバムに収録された「駅」という曲を指した話だ。山下達郎の妻である竹内まりやが作詞作曲し中森明菜に提供した曲だ。

山下達郎は中森明菜の歌い方がよほど気に入らなかったらしい。その後山下達郎が編曲し竹内まりやがセルフカバーしてヒット曲となった。その鬱憤を8年越しでライナーノーツにぶつけている。ライナーノーツ上でブチ切れているのだ。

中森明菜は近藤真彦との交際の末に自殺未遂を図った。ジャニーズ事務所にとって中森明菜は好ましくない存在であり、このライナーノーツも山下達郎がジャニーズ事務所に対する忠誠心を見せているのではないかという見方もある。

国連がジャニーズ問題を調査

被害者と面談

国連の専門家がジャニー喜多川性加害問題の被害者と面談すると7月15日に報道があった。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は13日、「ビジネスと人権」作業部会の専門家が7月24日~8月4日に日本を訪問すると発表した。

 同作業部会は国連人権理事会の決議で設置され、ビジネスにおける人権侵害を解決するために助言する役割などがある。訪日した際には、政府が策定した「ビジネスと人権」に関する行動計画の実施状況について意見交換する。

 作業部会は訪日時の調査内容をまとめ、来年6月の人権理事会に報告書を提出する。

 一方、ジャニーズ事務所の創業者による性加害問題で被害を訴える元所属タレントによると、作業部会側から面談したいとの連絡があり、複数人が応じる予定だという。

読売新聞オンライン

78歳の被害者による新証言

また、78歳の服部良一という俳優が70年前にジャニー喜多川から性加害を証言したとの報道が出た。

ジャニーズ事務所の創設者ジャニー喜多川氏(2019年に87歳で死去)による性加害問題で、俳優の服部吉次さん(78)が都内で取材に応じ、小学生だった70年前に、喜多川氏から自宅で100回近く繰り返し性暴行を受けていたと証言した。

東京新聞

服部良一は7月15日に都内で記者会見も行っている。

「東京ブギウギ」「青い山脈」など昭和歌謡の大ヒットメーカーで国民栄誉賞を受賞した作曲家の故・服部良一氏の次男で俳優の服部吉次さん(78)と、服部さんの同級生で友人の松﨑基泰さん(79)が15日、都内で記者会見を行った。

日刊ゲンダイデジタル

2023年7月17日 松尾潔がラジオで性加害問題を扱う(5回目)

これらを受ける形で、松尾潔は出演するラジオのコーナー「BrushUP」の中でジャニー喜多川の性加害問題を扱う。松尾潔がラジオでこのテーマを扱うのは5回目だ。

今まではよく知らなかったこと、知ろうとしてこなかったことに対し、強く恥じる気持ちがあるんです。その悔恨の思いがあるからこそ、繰り返しこの問題についてコメントを続けています。

松尾潔 BrushUP

知名度のある方に特に呼びかけたいです。「知名度の平和的な利用」というか、有効活用であるソーシャルアクションを起こしてください。そこに及んでこそ、真の意味での「尊敬される」アーティストだという風潮になることを願っています。

松尾潔 BrushUP

私達はどうあるべきか

松尾潔は「私たち一人一人が、この国が抱える問題として当事者意識を持ち、みんなで膿を出そう」と呼びかけている。

松尾潔の引用したマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉が忘れられない。

「最大の悲劇は悪人の暴力ではなく善人の沈黙であり、沈黙は暴力の陰に隠れた同罪者である」

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

善人だとしても沈黙すれば同罪者だと言っている。罪を知り、それについて口をつぐむことも罪なのだ。

私達の日常においても上司や組織の罪を指摘できずに黙っているという状況はしばしば起こる。例えば組織ぐるみの原産地偽装、不正会計、職場でのいじめなどいくらでも考えられる。

今日もテレビではビッグモーターの不正保険請求問題が盛んに報じられていた。会社の修理売上のノルマが厳しく、修理代を増やすために車に傷を付けたり凹みを作ったりして修理代をかさ増ししていたと報じられている。

「沈黙は金」「言わぬが花」「口は災いのもと」ことわざは黙っているように勧めてくる。私達は波風を立てないのが良し、長いものには巻かれろ、寄らば大樹の陰と教え込まれて生きてきた。

ビッグモーターの整備士が「給料は良いが、客の車にわざと傷を作ることにすごい罪悪感をもっていた」と語っていたのが印象的だった。

ビッグモーターの整備士の様に、黙っていることに罪悪感を抱く人も居る。罪と知って黙っていることも罪なのだ。言うも地獄、言わぬも地獄という状況になりかねない。どうすれば良いのだろう。

組織に属する人間や弱い立場に置かれた人間に声を上げるのは難しいかも知れない。声を上げれば職を失ったり居場所を失ったりする可能性があるからだ。生殺与奪の権利を握られている状況だ。

山口周の本を思い出した。

山口周は本の中で以下のように説く。組織は劣化いていく。劣化した組織はオッサンが牛耳っている。オッサンの牛耳る組織をどうにかするにはまず、オピニオン(意見)する。意見しても直らない組織ならエグジット(離反)しろ。組織を離れても生きられるように普段からモビリティ(スキル)を獲得する努力をせよ。

ここでの劣化した組織とはそのまま罪を犯す組織と置き換えられる。私達は自分自身では何も成長せずに、組織に頼りっぱなしで生きていては、組織に対して意見も離反もできなくなってしまうのだ。意見も離反も出来なければ罪悪感を感じながら黙っていることになってしまう。

一人で生きていけるスキルを身につけるのも簡単ではないだろう。しかし何もせずに生きているよりは何かを学びながら生きている方が何倍も価値がある。仕事をしながら勉強している人は今後も続けることに価値がある。それがやがては社会の正義につながるかも知れない。