賃貸AD問題は不動産業界の崩壊につながる あるいは人の見た目の重要性について

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怖い人を見つけてしまった。まず見た目が怖い。そして言っている事も恐ろしい

ペーパー宅建士さんという方から紹介していただいた興味深いツイートにその怖い人は登場する。リンクを貼るので見てほしい。怖い人の動画を紹介するツイートがバズっている。

仲介手数料を無料にする魔法の言葉

You Tubeスクショのツイートがバズる

仲介手数料無料にする魔法の言葉」を紹介する動画のスクリーンショットのツイートだ。動画の題名も不動産業者にとっては恐ろしい。

動画の主は「不動産Gメン滝島」という方である。とにかく顔が怖い。

不動産Gメン

Gメンと言うと、麻薬Gメンや万引きGメンを思い出す。麻薬Gメンは麻薬を取り締まるし、万引きGメンは万引き犯を捕まえる。滝島さんは不動産Gメンなので不動産業者を逮捕する役割なのかもしれない。

ところが不動産Gメンと言いながら滝島さん自身も不動産屋さんのようだ。万引きGメンが万引きするようなものだろうか。命名の動機はよくわからないが、動画の撮影は滝島さんの不動産屋の店内で行っていると思われる。

動画主 不動産Gメン滝島

滝島さんの動画のスクショをツイートした主は「サイグサ|東京不動産×YouTube@saigusa_tokyo」という方だ。こちらも不動産業界関係と思われる。

ツイート主 サイグサ|東京不動産×YouTube@saigusa_tokyo

動画が約7万視聴で、ツイートは約1.2万リツイート&13万いいねとなっている。ツイートはいわゆるバズった状態だ。

刺激的な画像と字幕

ツイートの内容が刺激的だ。仲介手数料を無料にする魔法の言葉があるというのだ。その動画をスクリーンショットで紹介している。そのスクリーンショットの画像と字幕が目を引く。

ツイートに寄せられるコメント

ツイートには多くの返信が寄せられている。返信には同業者と思われる方からの動画の内容を冷笑的に見るものが目についた。

これらの返信も不動産業界関係の方だと思われる。不動産業界から「不動産Gメン滝島」さんに軽いヘイトが向けられている形だ。

一方で「不動産Gメン滝島」さんからの情報を素直に受け取る向きもある。

動画のリンクも貼っておくので暇な人は見てほしい。時間にして10分位の大作だ。

賃貸物件を借りる時に通常は不動産屋に仲介手数料を支払う必要がある。この仲介手数料を無料にできるという動画だ。なぜ仲介手数料を無料にできて不動産仲介業が成立するのか、またなぜヘイトが寄せられているのか見ていきたい。

仲介手数料の法律上の制限

ここから長々と法的な説明をするが、これを読まなくてもこのエントリーの内容は伝わるので、法律アレルギーの方はここまで読み飛ばしてもらって構わない。

賃料一ヶ月分プラス消費税

不動産関係に詳しくない方のために仲介手数料の法律的な説明をする。

賃貸物件を借りるためには、一般的には不動産屋を訪れる。ここでは一般的な仲介手数料の話をする。

不動産業者に物件を探してもらって、その物件の賃貸借契約をした場合、通常は仲介手数料というものを物件を探してくれた不動産会社に支払う。

物件を紹介してくれた不動産屋は仲介手数料をもらうために営業している。

不動産業者が一つの契約で受け取ることのできる仲介手数料は法律で上限が決められている。賃貸仲介であれば賃料の一ヶ月分プラス消費税だ。

家賃が50,000円のアパートなら消費税込みで55,000円が仲介手数料の上限となる。

客付け業者と元付け業者

用語の整理もしておこう。格好いい業界用語がある。

賃貸物件を探している客の相手をする業者を業界用語で客付け業者と言う。

客付け業者のイメージ

駅前に並ぶ大手フランチャイズの店が代表的な客付け業者だ。

一方大家から賃貸物件の斡旋を任される業者を業界用語で元付け業者と言う。大家から物件を預かっている立場だ。

元付け業者のイメージ

昔からある不動産屋というイメージの店が元付け業者には多い。最近では不動産管理会社を兼ねていることもある。

画像引用元:リドックス

複数の業者が関与しても手数料の総額は変わらない

不動産屋の仲介で賃貸借契約が成立した暁には仲介手数料の支払いが発生する。

仲介手数料を受け取る権利があるのは、不動産を借主に紹介して契約締結した客付け業者や、家主から物件を預かっている元付け業者だ。

家主から物件を預かった業者(元付け)と、入居案内をした業者(客付け)が同一の場合もあれば、それぞれ別の業者である場合もある。

一つの契約に対して仲介する業者が複数社介入した場合でも、法律上は関与した不動産業者全体受け取れる手数料の上限が決められている。

一つの契約に複数の業者が関与した場合でも、業者が受け取れる手数料は、全ての業者を合計して賃料の一ヶ月分+消費税だ。

法律上の上限額

つまり、借主は契約に関わる業者が何社あろうとも支払う仲介手数料の上限は変わらないのだ。

関与した全ての業者が受け取る仲介手数料の合計額が賃料の一ヶ月+消費税以下というのが法の定めだ。

複数の業者が契約に介入した場合に、借主が支払った仲介手数料をどの業者がいくら受け取るかは業者間で取り決める。

例えば仲介手数料の総額が55,000円で、元付け業者と客付け業者で仲介手数料を折半という取り決めであれば、それぞれの業者が22,500円ずつを受け取れる。

どこがどのような割合で受け取るかは業者間の自由だ。ただし関与したすべての業者が受け取る仲介手数料の合計額は賃料の一ヶ月分+消費税以下でなければならない。これが法律上の仲介手数料の上限額だ。

一つの契約が成立したら動く仲介手数料の額は、賃料の一ヶ月分+消費税なのだ。

支払うのは借主と大家から0.5ヶ月分ずつが原則

これまで、仲介手数料の上限の全額を借主が支払うという仮定で話を勧めてきた。

実は報酬の支払者の原則も宅建業法と国土交通省公示で定められている。

法の原則では借主が全額を支払うとはなっていない。

法の原則では借主と大家が仲介手数料を折半で支払うことになっているのだ。

画像引用元:朝日新聞デジタル

賃料の一ヶ月分+消費税額相当の手数料を大家と借主が折半で不動産屋に支払う。これが法の原則だ。

つまり家賃が50,000円の物件であれば、借り主は仲介手数料として25,000円+消費税を支払うのが原則である。

実態は借主全額負担

しかし実態はそうはなっていない。法律違反なのかというと直ちにそうなるわけでもない。

国土交通省公示に例外として「当該依頼者の承諾を得ている場合を除き」という文言が挿入されている。

「依頼者の承諾を得ている場合」とはこういう事だ。

仲介する不動産屋が、物件を探しに来た客に「仲介手数料はあなた(借主)から上限額をもらいますけど良いですね?」という承諾を得ていれば、借主から仲介手数料として上限額である賃料の一ヶ月分+消費税をもらうことができるのだ。法律はそという建付けになっている。

現場ではそのようなやり取りが口頭で交わされているかは疑問だ。ただし不動産屋も法対策は行っているだろう。

「こちらにも記入捺印をお願いします」と渡された紙が「賃料の一ヶ月分+消費税の金額の手数料を支払う」と書かれた承諾書であるという可能性は大いにある。

承諾書のイメージ 引用元:不動産リサーチ

仲介手数料の条文

ここまで説明した通り、あくまで法律上の原則としては仲介手数料の支払負担者は大家と借主の折半なのだ。暇な人は条文を確認してほしい。

宅建業法第四十六条

宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。

宅建業法

国土交通省告示 貸借の媒介に関する報酬の額

宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額( 当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。) の合計額は、当該宅地又は建物の借賃( 当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。) の一月分の一・一倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たつて当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の〇・五五倍に相当する金額以内とする。

国土交通省告示
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額

ただし現実的には多くの場合は不動産を借りた人(借主)から仲介手数料の上限を受け取っている。

ほとんどの場合、大家は仲介手数料は支払っていない。ただし大家は他の費用を不動産業者に支払っている可能性はある。これは後述する。

仲介手数料が不動産仲介の糧

法律の建付けとしては、一つの賃貸借契約で不動産屋が受け取れる仲介手数料の上限は賃料の一ヶ月+消費税で、実態として多くの場合は借り主が全額を支払っているという説明を長々とした。

賃貸仲介の不動産屋はこの仲介手数料を生きる糧としている。

仲介手数料をもらえなければ、収入が無くなってしまうことになる。

そこにこの方の登場である。「仲介手数料をゼロにする魔法の言葉」があると言うのだ。不動産業者が生きる糧を捨ててタダ働きしてくれるというのだろうか。

ツイッター

不動産Gメン滝島さんだ。世界のナベアツではないので3の倍数で阿呆になってはくれない。

世界のナベアツ

不動産Gメン滝島さんは静止画で見るとむちゃくちゃ怖い。

ところが動画を見ると、不動産Gメン滝島さんの声や話し方がめちゃくちゃソフトだった。ギャップに驚く。ギャップ萌えとはこの事だろうか。

動画を見るのがダルい人に、不動産Gメン滝島さんが言いたいことをまとめる。シンプルだ。

「不動産屋の収入源は借主からの仲介手数料だけじゃない。物件によっては他にも収入が入るから、そういう物件を紹介してもらって借主の仲介手数料はタダにしてもらおう!」ということだ。

不動産Gメン瀧島さんによると、仲介手数料が無料になる条件は2通りある。

AD付き物件自社管理物件だ。

条件がニ通り出たが実は内容は同じだ。いずれも「ADがあるから仲介手数料は無料でいいじゃん」というものである。

ADについて見ていこう。

ADとは

あまり知られていない

ここからが大切な所となる。不動産業界にはADというものが存在する。歴然と存在しているのだが、業界外にはあまり知られていない

ADの性質上、業界から一般に向けて堂々と喧伝できるものではない。

ADとは「advertisement(アドヴァタイズメント)」の略で、日本語では「広告費」という。

大家が支払う成功報酬

結論から言うと、大家から不動産屋に支払われる仲介手数料(成功報酬)のことだ。

さきほどからしつこいくらいに、一つの賃貸借契約で不動産業者が受け取れる報酬の上限は「賃料の一ヶ月分+消費税」と法律で決められていると説明してきた。

ところが現実には、仲介手数料とは別に「AD」と呼ばれる報酬を不動産業者は大家から受け取っている場合があるのだ。

不動産業は賃貸契約が成立したら、借主からは仲介手数料を法定の上限の金額をきっちり受け取り、さらに大家からは「AD」と呼ばれる報酬も受け取っている可能性がある。

動画の言いたいことは「不動産業者はこっそりADをもらってるんだから、仲介手数料は負けてもらえるよ」ということなのだ。

ADの法的解釈

なぜそのような法律違反とも言えそうな事がまかり通っているのかを見ていこう。

「AD」、日本語では「広告費」は国土交通省告示の報酬規定に記載されている。「広告費」は仲介手数料とは別に受け取ってもいいよ、と書いてあるのだ。

第九第二から第八までの規定によらない報酬の受領の禁止
① 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し、第二から第八までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によつて行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。

宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
( 昭和四十五年十月二十三日建設省告示第千五百五十二号)
最終改正令和元年八月三十日国土交通省告示第四百九十三号

「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額は受け取ってもいいよ」と書いてある。

広告費は特別な費用

広告費とはどんなものだろうか。SUUMOへの掲載料金やチラシの作成費用を想像する人もいるかも知れない。しかしSUUMOやチラシの費用は依頼者の依頼によって行う広告とはみなされない。

売買のものだが判例がある。

一般に宅建業者が土地建物の売買の媒介にあたって通常必要とされる程度の広告宣伝費用は、営業経費として報酬の範囲に含まれているものと解される

東京高裁昭和57年9月28日判決 判時1058号

SUUMOやチラシは通常必要とされる程度の広告宣伝費だろう。それらは必要経費として報酬の範囲に含まれているとされている。

法の定める報酬を超えて受け取ることのできる広告の料金は、かなり特別な広告を想定している。例えば依頼者の依頼で、新聞の一面広告に新築賃貸物件の募集広告を掲載するといったものである。SUUMOやチラシはただの営業活動であり、不動産業者が受け取る法定の仲介手数料で賄われるべきなのである。

広告費規定の拡大解釈

しかしこの広告費規定を拡大解釈して、大家から不動産業者への入居斡旋成功報酬としているのが今の不動産業界のADだ。

不動産屋がADの名目で何か広告宣伝活動をしているわけではない。ADは単純に入居斡旋の成功報酬となっている。

つまり不動産業界は法律の上限を上回る報酬の事をADという呼び名を使って誤魔化そうとしているに過ぎない。

後ろめたさを感じない事も無いから、法定を上回る報酬の名称をADにしているだけなのだ。グレーな部分などと言われることもあるが、完全に違法状態だと筆者は見ている。

なぜ大家は支払うのか

大家はなぜ法律上支払う必要の無い成功報酬をわざわざ支払うのだろう。原因の一つに物件の魅力不足が挙げられる。

ADが設定される経緯を例示してみよう。

長期に渡って空室の賃貸物件が存在するとしよう。他の物件と比べて特に魅力のない物件は普通に募集をしても入居者が決まらない。

だからといって空室で放置しても空室からは収益は生まれない。

そんな時に元付け業者(管理不動産業者)が大家に「ADをつけてみますか」と提案する。それで入居者が決まるならと大家がADの設定に同意する。

例えばADを2ヶ月に設定すると、入居者を決めた不動産屋に仲介手数料とは別に成功報酬が家賃の2ヶ月分支払われることになる。

AD付きのチラシのイメージ 画像引用元:ウェルスハック

大家からしてみれば空室で2ヶ月遊ばせるのも、ADを2ヶ月分支払うのも同じことである。管理不動産業者にADの設定を持ちかけられれば、遊ばせるよりは良いかと同意する大家があるのも無理からぬことであろう。

ADの抱える問題点

我田引水を招く

だが、ADには弊害もある。客付け業者の立場からも見てみよう。客付けの不動産業者が、客の依頼を受けて物件を紹介する時を考えてみる。

客は希望の条件を提示する。希望家賃、エリア、間取り、築年数、部屋のイメージ等々色々と希望があるだろう。

不動産業者は多くの物件の中から最も客の希望に合う物件を紹介して、その物件の家賃の一ヶ月分の仲介手数料を受け取ると言うのが建前だ。

しかしADが存在するとなると、不動産業者は客の希望に当てはまる物件を探すポーズを取りながら、不動産業者が受け取れるADも計算にいれる。

客の希望条件をそっちのけにして、ADが付与されている、つまり業者の収入が多くなる物件に客を誘導する可能性が生まれてしまう。我田引水である。

AD付き=ボロ物件

ADが付与されているということは、物件の魅力が乏しいという可能性が大きい。そんな魅力の乏しい物件を優先的に勧めるインセンティブが不動産業者に生まれてしまう。

情報を持たない客は、業者が「条件に当てはまる物件はここしかありません」と言えば、それを信じるしかない。

業者の収入の増加を目的にして魅力の乏しい物件に誘導するという行為は客を蔑ろにしている。

同業者から冷ややかな反応

最初に取り上げたTwitterスレッドで、動画の主に冷ややかな感想が寄せられるのもここから理解できる。

仲介手数料を無料にしてもらうために「ADのついた物件を探せますか」と言えば、ADのついた物件を紹介してもらえるだろう。

しかし、ADのついた物件は必然的に魅力の乏しい物件である可能性が高い。

そのため内情をわかっている同業者界隈でバズってしまったのである。「裏技と称してボロ物件を紹介される行為を紹介している」という形で業界人に晒されている形だ。

保険業界にも同様の問題

保険業界の利益誘導

最適な商品を紹介するフリをして、自身の利益が増えるように客を誘導するという問題は他の業種にも見られる。

同じような問題が保険業界にもあるのだ。

来店型の保険代理店が近年増えている。「ほけんの窓口」「保険見直し本舗」「ほけんの110番」等数多くのショップが有る。

来店型保険ショップ

これらの保険ショップに「自分の保険を点検してくれそう」「安い保険への切り替えを勧めてくれそう」という印象を持っている消費者もいるだろう。来店すれば無料で保険の相談に乗ってくれるお店というイメージだ。

だが、実際にそこにいる店員さんは「ボランティア相談員」では無い。あくまで「営業職員」である。客の希望の保険を勧めるポーズを取りながら、実際は代理店収入である手数料の高い保険商品を販売している可能性が存在する。

「お客様に最も適した保険商品を紹介料無料で知識豊富なスタッフがおすすめします」と言いながら、実際は店が儲かる商品ばかりを契約させようとする可能性があるのだ。

金融庁が問題視

客はそもそも保険知識に乏しいからこそ相談に訪れている。客と保険ショップとの間での情報格差があるのだ。手数料収入を優先して保険契約を行うのは、店舗からすれば赤児の手を捻るよりも簡単な事だろう。

金融庁はこれを問題視していて、保険を販売した際に保険代理店が受け取る手数料の開示を進めようとしている。

全保険の手数料開示要求、金融庁 乗り合い代理店の顧客保護
(2017年2月3日。中日新聞からの一部抜粋)

金融庁が、生命保険各社に対し、複数会社の保険を扱う「乗り合い代理店」に支払っている販売手数料を商品別に開示するよう求めたことが3日、分かった。
乗り合い代理店向けの全商品が対象。

代理店がさまざまな保険の中で、ニーズに合うかどうかではなく、生保会社から受け取る手数料が高いものを優先する勧誘から、顧客を保護するのが狙い。

保険ウィズ

保険契約を行った時に、代理店がその契約から受け取る報酬額を開示させようとする動きだ。

不動産業界のADは違法の可能性が高いが、保険の手数料は違法ではない。

保険の手数料は違法ではないが、業者の受け取る手数料の金額の透明化を行わないと、顧客の利益を保護出来ないという判断だ。

ADを続ければ業界への信頼を失う

飛び交うAD情報

消費者の利益を保護しようという動きの見られる保険業界は偉い

一方の不動産業界はどうだろう。原則的に禁止されているはずの「AD」に関する情報が、業者間で飛び交っている

大手管理会社が送ってくる空室一覧表には堂々と紹介料〇〇%との記載が見られる。この紹介料はもちろんADのことだ。

紹介料とはADの事

業者向け物件流通のWebページも同様だ。ADの金額が記載してある。下の写真の場合、手数料割合が仲介100%となっている。これは入居者を見つけた業者が仲介手数料を全額受け取れるということだ。

それに加えてADが2ヶ月分付いている。この物件の入居者を契約した業者は賃料の3ヶ月分の収入を得られることになる。

このアパートは賃料が52,000円なので、得られる収入は賃料相当への消費税を加味すると161,200円にもなる。

AD2ヶ月分、手数料割合仲介100%

賃貸仲介でこれだけの収入を得ている。業者が賃貸仲介を行っているのはこれだけの収入を期待しているからとも言える。賃貸仲介専門の業者からも「今さらADを無くされたら、商売を続けられない」と言う声が聞こえて来そうだ。

業界内の秘密ではなくなっている

ADの話は業界だけの秘密とは言えなくなっている。Googleで「賃貸 AD」を検索すれば、多くの情報が出てくる。

「ADはどうやら不動産業界の良くない慣習らしい」という情報がどんどんヒットする。

不動産業は消費者あっての商売である。消費者の利益を蔑ろにする行為を続ければ、消費者からの不動産業界に対する信頼は失われてしまうだろう。

消費者と業者の情報格差

保険業界と同じく、不動産業も消費者と業者との情報格差を収入の原資にしている部分が大きい。そのような職種では、一番大切なのは消費者からの信頼である。

消費者は不動産に対する情報を業者ほどは持っていない。そこで信用できる業者だからこそ、住まい選びという大切なイベントを手数料を支払って業者に託すのである。不動産業は信頼商売と言っていい。

業界の信頼が無くなってしまえば、不動産業自体が成り立たなくなる危険性さえある。商売が成り立たずに困るのは不動産業者である。

信頼を得るための取り組み

不動産業界も保険業界の動きを見習うべきだと筆者は考える。やるべき事はたった二つだ。

ADの合法化と手数料の透明化だ。

一つ目のADを合法化、は賃貸仲介時に受け取ることのできる報酬の上限を引き上げるということだ。現在の「賃貸仲介で得られる手数料は賃料の1ヶ月分+消費税」という上限を引き上げる。

二つ目の手数料の透明化は、契約時に大家から不動産会社に支払われる手数料の額を可視化する仕組みだ。

物件ごとに契約成功時に不動産業者が得られる手数料収入が表示されていれば、客は物件選択の際に業者が得る手数料の情報も考慮することができるようになる。

「この物件をしきりに勧めてくるのは手数料が高いからじゃないのかな?」「手数料が低いのにこの物件を勧めてくるということは、私の条件に適しているのだろう。」この様に考えることができるようになる。同時に不動産業者も我田引水的な物件紹介はやりにくくなるだろう。

大家としてもADに頼りづらくなれば、物件の魅力向上という本来の大家の仕事と呼べる行動をとるインセンティブにつながる事だろう。

動画切り取りは恐ろしい

動画のキャプチャやTwitterは恐ろしいなと言うのが今回の一番の感想だ。

最初にツイートで滝島さんのお顔をキャプチャで見た時は「ウザそうな奴だなあ」というのが筆者の正直な感情だ。

ところが動画の終盤でのやり取りをみていると感情に変化が起きた。

撮影を手伝っているスタッフであろう人から「でもこんな『AD付きの物件紹介してください』とかいう客が来たらこいつ変に知識持っててウザいなと思いませんか?」と滝島さんに質問が投げかけられた。

「150%(ウザいなと)思いますね」と滝島さんは笑顔で答える。素直な人だ。ここまで喋ってきたことを自分でひっくり返してしまうような発言をさらっとしてしまった。

画像を見てほしい。なんとも可愛らしい笑顔で答えるのだ。最初のツイートのキャプチャ画像と同じ人とは思えない笑顔だ。

人間には一目相手を見ただけで、その人柄を判断してしまうと聞いたことがある。動画のキャプチャやツイートでも、動画の登場人物は人柄を判断されてしまうという事だ。

数々の実証研究からは外見が人間の行動に対して相当の影響力を持つと結論づけられる。

 「容姿で能力を決めつける」といったいわゆる「ステレオタイプ的判断」が望ましくないことは当然だが、じつはこのような判断のやり方は人間が多用していて避けられないことを近年の行動経済学的研究や社会的認知研究は示している。

社会心理学からみた「外見(身なり)」の大切さ(その2)永野 光朗

筆者は滝島さんのキャプチャ画像を見て、「うざそうな人だなぁ」と、人となりを勝手に想像していた。ツイートを見た同業者も同じ気持ちから冷たい返信を送ったのかもしれない。しかし、動画やこの笑顔も見た後では印象が全く異なっている。

「真面目で優しそうな人じゃないか」と思っているのだ。「滝島さんは見た目で損しているなぁ」と勝手に心配までしている。

「滝島さんは自分の顔のキャプチャ怖すぎと言うのを自覚した方が良い」と言うのをこのエントリーの結論にしようと思う。滝島さんが不動産Gメンとしてどんな活動をしているのかは分からずじまいだったが、陰ながら応援したいと思う。