サービス再配は諸悪の根源 今すぐやめろ【宅配便】

宅配便
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宅配便の再配達問題の話をしようと思う。

宅配便関係者諸賢にサービス再配を止めろと言いたい。サービス再配と再配サービスは言葉は似ているが意味が違う。サービス再配は今すぐやめた方がいい。

「宅配便の関係者ではないよ、ただのユーザーだよ」という方は寝っ転がりながら「そんな問題があるんだー、ふーん、大変だねー(鼻クソホジー)」というスタンスで読んでくれれば良い。

サービス再配って?

宅配便業界にはサービス再配という言葉がある。「再配達の依頼が無いけど、帰宅を見計らって再配達に伺う行為」の事をサービス再配と言う。

再配サービスとは違う。再配サービスというのは「不在票を見て連絡をしてくれたら再配達します、再配達手数料はいただきませんよ」という意味だ。

サービス再配は手数料を取らないどころか、再配達依頼の連絡が無くても再配達してしまう行為の事だ。

一般的では無い言葉

「サービス再配」という言葉は一般的ではない。グーグル検索しても「再配達サービス」という文脈がヒットするばかりだ。

ツイッターで「サービス再配」を検索すると言葉のニュアンスが分かるものがヒットする。

上は再配達依頼が無いけど親切心で「サービス再配」をしたらクレームを言われたという怒りのツイートだ。

こちらは不在票を投函しても連絡が無く、毎日サービス再配をしていたときのエピソードだ。

これらを読むとサービス再配と言う言葉が表したいニュアンスがいくらか伝わると思う。

なぜ依頼が無いのに再配達に行く?

そもそも再配達の依頼が無ければ、再配達に伺ってもその受取人が帰宅しているかどうかは分からない。サービス再配は空振りになるリスクがある行為だ。そんなリスクを犯してまでなぜサービス再配をするのだろうか。理由はいくつか考えられる。

近くに来た

宅配便は一日に同じところを何度も通る。時間帯指定サービスが有るためだ。

佐川急便 時間帯指定サービス

同じマンションに何度も行く事もある。昼間に不在票を投函した家の前を夕方通ったら部屋の明かりが点いていた、そういう状況ならついでに伺うかという事になる。近くに来たというのはサービス再配を行う理由の一つだ。

荷物が溜まる

不在票が投函されていることに気付いても、すぐに連絡をする受取人ばかりではない。というかすぐに連絡をする人の方が少数派かもしれない。

すぐに連絡をするようなキッチリした人はそもそも不在配達とならないように受け取り方法を工夫している。

不在票を見た受取人はしばらく考える。「今日はまた出かけるんだよな」「明日はいつ居るかわからないな」「次の休みは受け取れるかな」色々と考えて結局連絡をできずにいる。

そんな受取人が多いと不在持ち戻りの荷物がどんどん溜まってしまう。宅配便は荷物を配達するのが本分だ。荷物を預かるのが仕事ではない。そこで夕方や夜の在宅の可能性が高い時間帯に再配達に行ってみようかとなる。今風に言えばワンチャン居るかも知れない。

荷物が溜まるのが嫌というのもサービス再配を行う理由の一つだ。

翌日に残したくない

その日に配達完了とならなかった不在持ち戻り荷物は翌日また配達に行く羽目になる。「全ての荷物を1日1回は訪問しましょう」みたいなルールが存在する場合があるからだ。不在持ち戻り荷物を翌日に持ち越してしまうと翌日の仕事が忙しくなってしまう。

ただでさえ宅配便の仕事は忙しい。毎日新たな荷物が到着する。前日の荷物を持ち越す余裕はない。その日の荷物はその日のうちに片付けたいというのが配達人の気持ちだ。なので再配達の依頼が無くとも再び配達に行ってしまう。サービス再配だ。

また一つの配達エリアの担当者が、日によって変わるという場合もある。翌日の担当者とのパワーバランスに依るが、翌日に荷物を持ち越すと、翌日の担当者から叱責されるという場合もある。「なんで不在持ち戻りがこんなにあるの?夕方潰さなかったの?」と詰められる。

不在持ち戻り荷物が原因で翌日の仕事が忙しくなるためだ。翌日の担当者から怒られないためというのもサービス再配を行ってしまう原因の一つだ。

正式なサービスではない

サービス再配は正式に定められたサービスではない。宅配便の代表であるヤマト運輸の宅急便約款を見てみよう。

(荷受人等が不在の場合等の処置)
第 十二条 当店は、荷受人又は前条に規定するものが不在のため引渡しを行えない場合は、荷受人に対し、その旨を荷物の引渡しをしようとした日時及び当店の名称、問い合わせ先電話番号その他荷物の引渡しに必要な事項を記載した書面(以下「不在連絡票」という。)によって通知した上で、営業所その他の事業所で荷物を保管します。

ヤマト運輸 宅急便約款

届け先が不在だった場合は不在票を投函して保管するとしか書かれていない。そもそも約款には再配達に関して定められていることは無い。

「何時までに連絡すれば、いつの配達になる」などということは運用ルールとして案内されている。

ヤマト運輸

WEB等を見ても「不在票を入れた後で、連絡をしなくても再配達に行くかもしれません」などと言うことは案内されていない。

サービス再配でスパイラルに陥る

宅配便業者がサービス再配を行っていると、配達環境がスパイラル的に悪化してしまう。理由を説明したい。

Wilkinsonを頼んだあなた

受取人の立場になって考えてみよう。例えばあなたが通販サイトで炭酸水をポチった。Wilkinsonの500ccペットボトル24本入りを1ケースだ。

まだWilkinsonの在庫はある。特に急いでいないため、ポチるときに受け取る日時など何も考えていない。

翌日ポチったことさえ忘れて仕事に行った。18時頃仕事を終えて帰宅すると不在票が投函されている。14時頃に配達に来たようだ。こっちは仕事をしているんだ、居るわけがないじゃないか。

再配達の依頼をしようかとも思ったが、依頼しても何時に来るかはわからない。風呂に入らずに配達を待ち続けるわけにも行かない。どうしようかと思いながら夕食を食べているとインターホンが鳴る。

宅配便業者だ。Wilkinsonを持って来てくれた。依頼していないのに来てくれたのだ。再配達をいつにするか悩まなくて済んだ。ラッキーだ。

こうしてサービス再配が行われている。

サービス再配が不良受取人を増やす

受け取る日時を何も考えずに通販をポチる受取人を不良受取人と名付けよう。

サービス再配が不良受取人を生み出し、不良受取人の増加がサービス再配を増やしてしまう。

今回あなたは通販をポチるに当たり、受け取る日時など何も考えなかった。投函された不在票を見ても何も対応しなかった。なのにWilkinsonを受け取ることができた。受取人からしてみれば素晴らしいサービスだ。

あなたは次回通販を注文するとき、受け取る日時の事を考えるだろうか。考えないだろう。今回何も考えずとも受け取ることができたからだ。

「こちとらワンルームマンションに住むサラリーマンだ。見れば想像がつくだろう。サラリーマンの帰宅時間なんて誰も似たようなもんだ。といっても毎日帰る時間はバラバラだから時間指定していても居ないかも知れないのよ。宅配便は空気読んで適当な時間に持ってきてくれればいいよ。今回みたいになんとなく受け取れるだろ」

という受取人の出来上がりだ。これが不良受取人だ。次回からも何も考えずに通販をポチるようになる。

サービス再配を行っていればそういう不良受取人が増えていく。配達人は不在持ち戻りを一つでも潰そうと一生懸命サービス再配を行う。サービス再配を経験した受取人は受取日時の事を考えずに注文する不良受取人になっていく。

不良受取人が増えると不在配達が増えてしまうために、不在持ち戻りを減らそうと配達人はサービス再配に精を出す、、、という無限のスパイラルに陥る。

不良受取人が犯した多くの罪

大袈裟に言うと不良受取人は通販をポチるに当たり多くの罪を犯している。

通販会社や宅配会社が荷物を受け取ってもらうために用意している数々のオプションを尽く無視してただ漫然とポチってしまっているのだ。

無視されたオプションと不良受取人が犯した罪を見ていこう

注文時に受取日時を考えない罪

多くの通販サイトでは注文時に時間指定をすることができる。

ZOZOTOWN

不良受取人でない普通の人は、自分が受け取れる日時を考えて配達時間帯を指定し、それを生活スケジュールに組み込む。

不良受取人は受取日時を全く考えずにポチってしまっている。一人暮らしなら自分が家に居なければ誰も荷物を受け取ることはできない。実家のようにお母さんが受け取ってくれはしない。

自分で自分が受け取れる日時を考えるしかないのだ。不良受取人はそんなことも考えずにただポチリと注文してしまっている。

注文時の受け取り場所選択をしていない罪

ZOZOTOWNは注文時にヤマト運輸営業所受け取りやコンビニ受け取りを選択することができる。

Amazonも「ヤマト運輸営業所受け取り」「Amazonロッカー」「コンビニ受け取り」などを注文時に選択することができる。

Amazonロッカー

受取スポットについて
受取スポットを選択すると、ご注文商品をご指定の店舗で受け取ることができます。

受取スポット対象の店舗は、ローソン、ファミリーマート、ミニストップ、ヤマト運輸営業所です。

Amazon

不良受取人はそれらを選択せずに漫然とポチっている。受け取り場所を選べるにも拘わらず何も選ばずに自宅に配達させているのだ。

発送通知や配達予告を無視

通販サイトは発送を完了した時に発送通知を送るのが一般的だ。発送通知には配達日の予定が記載されている。不良受取人はこれを見ても何も思わない。

また多くの宅配会社が配達の予告通知を送ってくる。例えば佐川急便でもスマートクラブに登録していれば配達予告のメールを送ってくる。

荷物の注文時に時間指定を指定なくても、このような宅配便会社からのメールから改めて時間指定や受け取り場所変更をすることが可能だ。

宅配便会社からの配達通知や不在通知からPUDOステーションでの受け取りを選択することも可能だ。

PUDOステーションは駅やスーパーなどに設置された宅配ロッカーである。PUDOにはヤマト、佐川、郵便を始め多くの宅配便事業者が対応している。

ところが不良受取人はこういう配達予告を受け取る努力をしないし、仮に通知を受け取っても無視している。

不良受取人は受け取る努力を何もしない

他にも受け取る方法はある。例えば自宅に「OKIPPA」などの置き配バッグと呼ばれるものを設置する方法だ。

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ところが不良受取人は置き配バッグを設置したりもしない。とにかく受け取るための努力をしない

通販をポチってから荷物が配達されるまでに、受取人には受け取るための努力をするチャンスが何度もある。努力と言っても小さな事だ。例えば時間指定をしたり、受け取り場所を変更したりするといったことである。通販会社や宅配会社が提供したチャンスだ。不良受取人はこれらのことを一切活用しようとしない

活用するチャンスがあるのに活用しないのは罪だ。不良受取人が不良たる所以はこれである。ただ漫然とポチって、いつか在宅している時にいい感じに配達されるだろうぐらいに思っている。

なぜ不良受取人が産まれるのか

サービス再配が不良受取人を作る

自分で注文した荷物を受け取るための努力をしようとしない不良受取人が発生してしまう原因はなんだろう。一つしかない。サービス再配をしてしまうからだ。

サービス再配が不良受取人を発生させる。

サービス再配をしているのは配達人だ。他ならぬ配達人が不良受取人を産み出してしまっているのだ。

受け取るための努力をするべき

通販荷物を受け取るのはポチッた本人である。本来受取人は受け取るための何らかの努力をして然るべきである。受け取るためのオプションは先述したように数多く用意されている。

不良受取人ではない普通の人はそれらのオプションから自分に合うものを選択して、一度目の配達で受け取れるように何らかの努力をしている。

例えば、時間帯を指定してその時間帯に在宅する、コンビニ受け取りを選択してコンビニに受け取りに行く、自宅にOKIPPAを設置するなどなど普通の人からすれば当然と言える事をしている。

不良受取人は一切努力をしない

不良受取人はそういう普通の努力を一切せずにただポチっている。ポチったあとでいつの間にか不在票が投函されている。

不在票を見ても連絡はしない。いつか受け取れるかも知れないとただぼんやりとしている。ぼんやりとしていたら気を利かせた配達員がサービス再配をしてくれた。

便利なサービス再配を経験してしまった。今後も心を入れ替えることはない。漫然とポチる行為を続けてしまう。

サービス再配が不良受取人を産み出してしまっているのだ。配達人は自分で自分の首を絞めているのである。

一度不在票を投函したら放置しろ

連絡がなければ返品

不良受取人の増加は不在率の増加を意味する。不在率が増加すると宅配便の労働環境は益々悪化する。

宅配会社や配達人はどうすればいいのだろうか。答えは簡単だ。サービス再配を止めることだ。

一度配達に行って留守なら不在票を投函してあとは何もしない。再配達の依頼があればそれに答え、連絡がないまま保管期限が過ぎたら発送元に返品する。ということに尽きる。つまりサービス再配をしないということだ。

サービス再配を廃止した日本郵便

サービス再配をしないという事に取り組んでいる会社がある。ゆうパックの日本郵便だ。

日本郵便が宅配便「ゆうパック」の再配達サービスを縮小したことが、14日わかった。従来は受取人の依頼がなくても翌日に再配達していたが、3月から再配達の日時指定を受けるまで郵便局で保管する運用に改めた。指定の時間に再配達することで荷物を渡しやすくし、従業員の負担を軽減する。再配達に依頼が必要としたのは大手では日本郵便がはじめて。

日本経済新聞 2018年3月14日

ゆうパックは荷物を不在で持ち戻った場合に、再配達の依頼がなくても翌日に再配達をしていた。サービス再配である。

このサービス再配を廃止するということが記事になったのだが、サービス再配の廃止は行って然るべきである。

早急にサービス再配廃止を

通販の荷物は受取人が自分で注文したものである。自分で注文した荷物の配達日時を指定せずに、不在票が投函されても連絡を行わない。

放っておいても気を利かせてサービス再配してくれて、なんの努力を払わなくても、なんとなく受け取ることができる。こんなことがまかり通っていては宅配便の労働環境は悪化する一方だろう。

配達コストが嵩めば、それを負担するのは最終的には我々消費者である。通販を注文するときには、その荷物をいつどのように受け取るのか考える、家で受け取れそうになければ職場やコンビニで受け取ることを考える、当然のことではないだろうか。

この当然の事をできなくしているのが「サービス再配」なのである。宅配便事業者は早急にサービス再配を廃止すべきである。