ヒロシと幻のパフェ

この記事は約2分で読めます。

朝7時。
ヒロシは布団の中でごそごそしながら、
テレビで「めざましテレビ」を見ていた。

軽快な音楽。
明るいスタジオ。
眩しすぎる笑顔の女子アナ。

「今日のトレンドは〜、じゃんっ! 原宿の“ご褒美パフェ”です〜!」

画面には、グラスからはみ出す大量の生クリーム、
宝石みたいなフルーツ、
そして上に乗る金粉チョコ。

「お値段なんと……2,000円ですっ♪」

ヒロシは、寝起きの目をこすった。
聞き間違いかと、音量を上げた。

「に…にせんえん……?」

テレビを見つめるヒロシの顔が、
段々と曇っていく。

(嘘やろ…? 200円のまちがいちゃうんか…?)
(2000円あったら3日分の食費やぞ……)

再び画面に映るパフェは、
光り輝いていた。
女子アナが「おいし〜い♪」と笑っていた。

ヒロシは布団の中で、つぶやいた。

「うそや…夢や…こんなん、金持ちの食いもんや…」

しばらくして、ヒロシは立ち上がった。
冷蔵庫を開けて、プリンを出す。

3個で98円のトップバリュのプリン。

それに、コーヒーフレッシュをかけて、
スプーンでひとくちすくった。

「……こっちのほうが、しみるわ」

テレビ画面では、
まだスタジオが明るく笑っていた。

ヒロシは、そっと目を逸らした。

終わり